エリーアンチエイジング研究室

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│研究日誌 エリー記す
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 第36日目 活性酸素の発生系
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 「ハル君、今日は活性酸素の話ですよ。」

 「活性酸素ですか。生物の大敵ですね。楽しみです!」

 「ハル君は活性酸素についてどの程度知っていますか?」

 「えっと、活性酸素は好気性生物が酸素を使ってエネルギーを産生する時に
 出るってことと、発生した活性酸素によってタンパク質、核酸(DNAなど)、
 糖質、脂質などの生体分子が酸化修飾(よけいな分子がくっつく)されるって
 いうことは知っています。生体分子は酸化修飾されると本来の機能を発揮で
 きなくなるんですよね。」

 「その通りです。では次にこの表を見てみましょうか。」

 (ぱらり)


 表 主な活性酸素産生系と性状
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 発生系              区画
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 スーパーオキシド産生系      スーパーオキシドは細胞膜アニオン輸
                  送系を介して細胞外にも漏出
                  (pH7, 1uM での寿命は約5秒間、拡散
                  距離は100 uM)
  
  ユビセミキノン         ミトコンドリア

  NADHオキシダーゼ        ミトコンドリア

  シトクロムc	          ミトコンドリア

  NADPH-シトクロムcオキシダーゼ  ミクロソーム

  シトクロムP450         ミクロソーム

  ペルオキシソーム/複合体3     ペルオキシソーム

  シトクロムb5          細胞膜

  インドールアミン酸素添加酵素  小腸

  ジアミンオキシダーゼ      小腸

  NADPHオキシダーゼ        好中球、マクロファージ、腎臓、
                  血管内皮細胞の細胞膜

  ミエロペルオキシダーゼ     好中球などの食胞内で反応性の高い次
                  亜塩素酸を形成

  キサンチンオキシダーゼ     血管内皮細胞、虚血障害、細胞質

  オキシヘモグロビン       赤血球内、溶血時の細胞外液、溶血性
                  尿毒性

  オキシミオグロビン       筋肉細胞、外傷時の細胞外液、尿毒性

  アルデヒドオキシダーゼ     肝臓

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 過酸化水素産生系         過酸化水素は両親媒性分子として膜脂
                  質層を透過可能(分解酵素がなければ
                  極めて安定で寿命は長い)

  スーパーオキシドの不均化反応  スーパーオキシドジスムターゼおよび
                  非酵素的反応

  スーパーオキシドの還元反応   グルタチオンやビタミンCとの反応

  アミノ酸オキシダーゼ      アミノ酸を分子状酸素により酸化的に
                  脱アミノする反応

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 ヒドロキシラジカル産生系     寿命は 70 ns 〜 200 us と高反応性
                  のため、拡散距離は 20 nm と小さく、
                  産生局所で非特異的に反応
 
  遷移金属イオンによる還元    ATP-Fe, ADP-Fe, Fe-アスコルビン酸

  Fe2+, Cu+によるフェントン反応  スーパーオキシド/過酸化水素系

  放射線照射           水の分解

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 一重項酸素と光酸化反応
  
  ポルフィリン類         日光皮膚炎、ポルフィリア
  ビリルビン           黄疸と光線療法




 「エリー先生、多すぎるし、知らない名前多いし把握しきれません!」

 「確かに活性酸素が発生する反応はさまざまですし全身で起こっていますか
 ら無理もありません。一度に覚える必要はありませんが、どんな反応がどん
 な場所で起きているかはざっと確認して下さいね。例えばさっきハル君が言
 ってくれたエネルギー産生時に出る活性酸素というのはミトコンドリアで発
 生しているもの指しています。」

 「はい。それにしてもこれだけ活性酸素が発生していると体中すぐに傷だら
 けになりそうですね。」

 「そうですね。でも生命は活性酸素を消去する仕組みを発達させて、体を守
 っていますから大丈夫ですよ。」

 「エリー先生、活性酸素を消去する仕組みにはどんなものがあるのですか?
 」

 「それはまた明日にしましょう。」
  



│備考欄 (今日の要点)
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 活性酸素は体の中の様々な場所で、多様な反応を介して発生している。


●参考文献
 主な活性酸素産生系と性状:石川冬木 編、『老化研究の最前線』、p.14、
 シュプリンガーフェアラーク東京(2002)

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