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│研究日誌 エリー記す
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第40日目 要介護に至る疾患
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ハル君が怪我をしてしまったそうで、昨日から入院しているそうです。今日
は彼のお見舞いに来ました。
「こんにちはハル君、大丈夫ですか?」
「エリー先生、来てくれたんですか!嬉しいです!」
「研究室から近い病院でしたし、心配だったものですから。でも様子を見る
限りあまりひどい怪我では無いようですね。」
「あはは。ちょっと打ち身とすり傷ができただけですよ。頭を打ったので一
応検査入院ってことで。明日には研究室に行けますから。」
「そうですか。何も無いと良いですね。」
「どうもご心配おかけしまして。それにしてもやっばり病院はお年寄りが多
いですね。さっき長期入院されているおばあさんと世間話で盛り上がりまし
たよ。」
「ふふっ。ハル君はだれとでもすぐ仲良くなれるんですね。」
「あはは、まあ。そのおばあちゃんなんですけど、転倒して骨折してここに
来たらしいんですよ。でも治りが遅くて、そうこうしているうちに筋力も弱
っちゃって一人じゃ立てなくなってしまったそうです。今はリハビリ中らし
いです。今は要介護状態だそうですよ。」
「ああ、高齢者の場合は十分にありえる話ですね。」
「要介護状態って大変ですよね。本人はもちろんですが、周りの人間にとっ
ても。」
「そうですね。ところで要介護になる疾患はどんなものがあるかご存知です
か?」
「えっと、あのおばあさんのように骨折と、認知症とかもそうですよね?」
「他にもいろいろありますよ。割合で言うと、
脳卒中 27.7%
衰弱 16.1%
転倒・骨折 11.8%
認知症 10.7%
関節疾患 10.4%
その他 23.3%
というところですね。これは介護が必要になった人全員の原因の割合ですけ
ど。さらに細かく見ると
男性の場合
脳卒中 42.9%
衰弱 11.5%
パーキンソン病 7.2%
認知症 6.2%
転倒・骨折 5.7%
その他 26.5%
女性の場合
脳卒中 20.2%
衰弱 18.3%
転倒・骨折 14.8%
認知症 13.0%
関節疾患 12.8%
その他 20.9%
といったところです。男性は脳卒中が半分近く占めているのが特徴的ですね
。」
「うひゃぁ、怖いなあ。」
「脳卒中は動脈硬化によって生じるものですから、動脈硬化を予防する生活
を続ければ脳卒中になるリスクは下げられるでしょう。衰弱や転倒・骨折の
場合は運動をして筋力をつけたり骨を強くしてりしてある程度防げますし、
認知症にしたって社会活動を活発に行なっていると進行しにくいというデー
タがあります。介護が必要にならないように、きちんと予防することが大事
です。」
「はい!もちろんです!」
「ところでハル君はどうして怪我をしたのですか?」
「はぁ、少し長い話になりますが、構いませんか?」
「はい。聞かせてください。」
「実はですね、昨日彼女と遊園地に行って、ローラー・コースターに乗るこ
とにしたんです。いちばん高いループの頂上に来た時、コースの脇に小さな
標識があるのが見えたんですよ。読もうとしたんですけど、とても小さいの
で、読めませんでした。あまり気になったんで、もう一度乗って確かめよう
としたんですけど、あまり速く動いていたものですからなんて書いてあるか
、またしても読めませんでした。それで、もうその時には、絶対にその標識
に書いてあることを読んでやろうと決心しまして、三回目に乗りました。頂
上に着いた時、よく見ようと、立ち上がった訳です。」
「それで、今度は標識に書いてあるものが読めたのですか?」
「はい」
「なんて書いてあったのですか?」
「立ち上がらないでください!……と。」
│備考欄 (今日の要点)
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要介護状態は予防できる。
●参考文献
要介護にいたる疾患:老年医学テキスト 改訂第3版、P.17、日本老年医学会
編、メジカルビュー社(2008)
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