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│研究日誌 エリー記す
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第43日目 老化によって臓器は萎縮します。
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「エリー先生、老化の本質は身体や生理機能の低下ですよね。視力が落ちた
り、筋力が落ちたり、体温調節が上手くできなくなったり。ところで機能低
下の原因ってなんなのでしょう?」
「ハル君はなんだと思いますか?」
「うーん……そうですねぇ、機械だったら連結部が摩擦で磨り減ったり、ね
じが緩んだり、部品の材質そのものが劣化したりとかですけど、生物の場合
はそれとは違う気がしますし。あ、でも活性酸素とかで細胞が傷ついて機能
しなくなるとか、死んじゃうとか?」
「それはいわゆる老化のフリーラジカル説ですね。それはそれとして、一つ
とても分かり易いのは臓器が加齢に伴い萎縮していくという事実です。臓器
が萎縮、つまり小さくなっていけばその臓器の能力は落ちます。例えば胸腺
は60歳代で40%まで減少し、90歳代では10%にまで減少します。胸腺は白血球
のうちのTリンパ球の分化・成熟に関わっているところです。胸腺が萎縮す
ればTリンパ球の分化・成熟させる能力も落ちますよね。他にも脾臓、腎臓
、脳、肝臓、筋肉なども加齢に伴って萎縮することが示されています。」
「いろんな臓器が萎縮してしまうんですね。萎縮の原因はなんなのでしょう
?」
「単純に臓器を形成している細胞数が減少していきます。細胞数に関する因
子として、
1. 細胞の増殖および維持に関係するホルモンや栄養物質などの液性因子が
加齢で低下する。
2. 細胞と細胞の相互作用および細胞と細胞外基質相互作用の老化による変
化
などが考えられていますが、まだはっきりとはしていません。」
「うーん……細胞を減らさない方法がわかれば老化を防ぐことができるかも
しれないですね。」
「それはアンチエイジング研究にとっては重要なテーマですよ。ホルモン療
法はその方法の一つかもしれません。例えば女性の場合、閉経後には血液中
の女性ホルモン含量が低下します。女性ホルモンを補充すると老化により退
縮した組織、たとえば皮膚萎縮や骨粗鬆症が改善されるという報告がありま
す。寿命延長さえも見られる場合があるそうです。しかし、ホルモン療法は
がんの発症率があがるなどの副作用もありますから、無闇やたらに行なえば
良いという訳では無いですけど。」
「でもホルモン療法も将来的にはどうなるかわかりませんよね?研究が進ん
で副作用が出ない方法が見つかればすごいことになりますよ!」
そうなることを私も願っています。自分の閉経後のことを考えると……けれ
ど、月のものが無くなるのは楽そうですけど。
│備考欄 (今日の要点)
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加齢に伴い臓器は萎縮する。このことが老化による身体や生理機能の低下に
つながっていると考えられる。
●参考文献
加齢に伴う臓器の萎縮:近藤昊・井藤英喜 著、『老化』、p.98-101、山海
堂(2001)
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