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│研究日誌 エリー記す
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第47日目 GNR 革命が招く危機
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「ハル君、今日は昨日話した GNR 革命(第46日目参照)が招く危機について
お話しましょう。」
「危機ですか?エリー先生、あんなにすばらしい革命がどんな危機を招くと
いうのでしょう?」
「順に説明しますね。
まずは G (遺伝学)革命が招く危機からです。G 革命は様々な病気や老化を
克服しますが、生命工学的に操作された新型のウイルスの脅威を招く恐れが
あります。いかにもアメリカ的な発想ですが、テロリストが新型ウイルスを
作ってばら撒くということです。GNR 革命を予見しているレイ・カーツワイ
ルはアメリカの発明家ですから、この発想は当然かもしれませんね。
次に N (ナノテクノロジー)革命が十分に進めばあらゆるバイオハザードか
らこの身を守れるようになるでしょう。しかし同時にその産物が自己複製す
る危険性が生じ、そうなればどんな生物的脅威よりはるかに強力なものとな
ると予想されます。というのも、ナノテクノロジーでは膨大な量の微細な機
械を働かせる必要があります。それらを一つ一つ作っていたのでは必要な仕
事をさせるまでに膨大な時間とコストがかかってしまうでしょう。しかし自
己複製する機械を作ることで、材料となる物質さえ与えれば指数関数的に増
やすことが出来るようになります。このように N 革命の肝は自己複製でき
る機械を作ることです。しかしその自己複製機械がヒトのコントロールを外
れ、ウイルスが突然変異するように少しずつ形を変えてヒトや環境に害を及
ぼすようになったら大変です。
最後に R (ロボット工学)革命です。R 革命の肝は人工知能、AI の発明です
。一度 AI が発明されれば、その AI はあっと言う間に人間の知能を追い越
すことでしょう。 AI の計算能力と記憶力は人間とは比べ物になりませんか
ら。そうなると N 革命によって生じうる危機すら防衛できるようになると予
想されます。ですがこの AI がヒトに友好的ではなくなれば、その脅威は G
革命や N 革命が招く脅威の比ではありません。」
「AI がヒトを攻撃し出すと言うことですか?まるで映画のターミネーター
やマトリックスの世界ですね。」
「そうですね。ただ AI もいろいろな AI が作られると思います。人間がい
ろいろな考えを持つように、AI もそれぞれが独自の考えを持つようになる
はずです。ヒトに友好的な AI もいれば、敵対する AI も出るかもしれませ
ん。敵対する AI が現れたら、友好的な AI の力を借りて戦争をする可能性
も無いとは言え無いでしょう。」
「なんだか話がSF過ぎてくらくらしてきました。そんな大それた話はさてお
き、とりあえず僕は R 革命か起きたら AI と友達になりたいです。楽しそ
う!」
「ふふっ。ハル君ならきっとたくさんの AI と友達になれますよ。」
│備考欄 (今日の要点)
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GNR革命は危機を招く可能性もあるが、対抗手段はある。
GNR革命のリスクは決して小さくないが、利益はそれとは比べ物になら無い
くらい大きい。
●参考
GNR革命が招く危機:レイ・カーツワイル著、『ポスト・ヒューマン誕生』
、p.252、日本放送出版協会(2007)
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