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│研究日誌 エリー記す
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第48日目 長寿の遺伝子
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「エリー先生、長生きする家系ってありますよね。」
「ありますね。例えば百寿者(100歳まで生き延びたヒト)が出た家系という
のはみんな長生きの傾向があるようです。」
「ということは100歳まで生きたヒトっていうのは、もともと長命の家系の
中でも特に長く生きたヒトってことになりますね。」
「そうです。ハル君の家系はどうですか?」
「知っている限りで親戚も含めて100歳を越えたヒトはいません。がっく
りです。」
「そう気を落とさずに。一つ面白い研究があります。2001年の報告ですけど
137の長寿家系に属する308人の遺伝子解析を行なったところ、染色体4番に
連鎖があったそうです。つまり染色体4番の位置に長寿をもたらす遺伝子が
ある可能性が示唆されたのです。」
「ということはその遺伝子の機能を解明して、さらにその遺伝子を持たない
ヒトに対して長寿遺伝子の機能を付加することができれば、誰でも長寿にな
れる可能性があるってことですね!」
「まあ、そういうこともあるでしょう。すでに機能が判明している長寿をも
たらす遺伝子というのもありますよ。それは動脈硬化になりにくい遺伝子で
あったり、アルツハイマー病になりにくい遺伝子であったりします。」
「動脈硬化にアルツハイマー病ですか。今はまだそういう遺伝子を体に導入
して長寿を目指すということはできませんね。そうなると動脈硬化やアルツ
ハイマー病を別の方法で予防すれば長寿になれるってことですよね。」
「そうですね。例え遺伝子を持っていなくても、他の方法で予防できれば結
果は同じだと思います。動脈硬化であれは肥満の予防や魚類に多い不飽和脂
肪酸を摂取するなどです。アルツハイマー病であれば適度な身体的・精神的
活動、十分な果実・野菜類の摂取などです。」
「遺伝子治療が可能になるまではとにかく他の予防法で対応するということ
ですね。」
「仮に遺伝子治療が可能になっても、他の予防法と組み合わせれば相乗効果
を得られると思います。」
「あはは、そりゃそうですね。」
│備考欄 (今日の要点)
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長寿をもたらす遺伝子の解明が進んでいる。
例え長寿遺伝子を持って無くても、動脈硬化、アルツハイマー病などの予防
を実践することで長寿を目指すことは可能。
●参考
長寿の遺伝子:井出利憲 編、『老化研究がわかる』、p.102-106、羊土社
(2002)
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