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│研究日誌 エリー記す
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第49日目 レーザーでシミが取れる理由
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「エリー先生、シミのレーザー療法ってありますけど、どんな原理でシミが
取れるのですか?」
「簡単に言うと、レーザーでシミの原因である色素や色素細胞を焼いてしま
うということですよ、ハル君。」
「焼く……上手く色素や色素細胞だけを、ですか?他の細胞には影響は出な
いのでしょうか。」
「では詳しく説明しましょう。まずレーザーというのは特定の波長を持った
方向性のある増幅された光だということを頭に置いてください。」
「それは知ってます。反対に白熱灯や太陽みたいな自然光はレーザーと違っ
て様々な波長の混ざった光なんですよね。方向もばらばらですし。」
「そうですね。レーザーでシミ治療ができるのはまさにこのレーザーの性質
を用いているからです。色素は光を吸収しますが、いろいろな波長の光の中
で、特に吸収しやすい波長の光というのがあります。シミの色素が特に吸収
しやすい波長の光を、シミがある部分にあてるとどうなると思いますか?」
「えっと、周りの細胞とかには影響を及ぼさずにシミの色素だけが焼かれる
と思います。」
「その通りです。これがシミのレーザー治療の原理です。」
「なんだかずいぶん単純ですね。」
「原理というのは単純なものですよ。でもたったこれだけの知識では色素性
皮膚疾患(シミ)の治療は上手くいきません。ではどうすれば理想的なレーザ
ー治療ができるのか。それには次の3つの条件必要です。
1.適切な波長の選択する
標的物質(メラニン)がレーザー光を選択的に(隣接する組織以上に)最大
限吸収し、かつ標的物質がある皮膚の深さまで届く波長。
2.適切な照射時間を設定する
照射によって標的物質が発生する熱エネルギーが周囲へ50%放散するま
でに必要な時間よりも短い照射時間。
3.適切な照射エネルギー
標的物質を破壊するのに十分な熱を発生させる照射エネルギー
この条件を満たさないとどうなると思いますか?」
「そうですね〜……まず1を満たさないとレーザーが正常な組織を傷つけま
すし、レーザーがシミまで届きません。次に2を満たさないとシミの周りも
熱で傷つきます。最後に3を満たさないとそもそもシミが焼けません。」
「良い答えです。この3条件の中で特に2の短い照射時間を満たす、というこ
とが初期のレーザー治療では難しかったようです。そのため当時はシミを取
ってきれいになるつもりが、逆に皮膚にひどいやけどを起こして痕を残して
しまうことも多々ありました。」
「うわ〜、それは辛いですね。今は大丈夫なのですか?」
「今はQスイッチというカメラのシャッターをさらに驚異的に速くしたよう
なスイッチがあるので、2の条件を満たせるようになり、シミの治療成績は
格段に進歩しました。」
「それは良かったです。今ならエリー先生も安心してレーザー治療受けられ
ますね。」
「それは、私に、消したほうが良いようなシミがある、ということですか?
(ずずい)」
「え、エリー先生……そんな睨みながら近づかないで下さい……怖いです。
」
「どう、なんですか?しっかり見なさい!」
「えっとその……はふぅ、エリー先生とってもきれいです……例えるなら、
茹でたて剥きたてのゆで卵のようです。」
「ふふっ、良い子ですね。」
毎日血の滲むような努力と莫大なお金をかけてお手入れしているんですもの
。シミなんかあるはずありません!
あぁ、でもいざというときのために良い病院探しておかないと。
│備考欄 (今日の要点)
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レーザー治療の原理はシミをレーザーで選択的に焼くこと
●参考
レーザー治療の原理、3つの条件:漆畑修 編、『美容皮膚科学』、p.7-13
、メディカル・コア(2000)
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