エリーアンチエイジング研究室

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│研究日誌 第5日目 エリー記す
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 標題:平均寿命は延び続けています。
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 「エリー先生、最近は長生きするヒトが増えていますね。医療の発達ってす
 ごいことですよね。」

 「そうですね。平均寿命は世界的に延び続けています。日本の平均寿命の延
 びをざっと見てみましょうか。」
 
 西暦  老年人口   平均寿命(歳)   首位死因
 (年)  (65歳以上 %) 男   女  
 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
 1950  4.9      58.0  61.5   全結核
 1960  5.7      65.3  70.2   脳血管疾患
 1970  7.1      69.3  74.7   脳血管疾患
 1980  9.1      73.4  78.8   脳血管疾患
 1990  12.0      75.9  81.9   悪性新生物(がん)
 2000  17.4      77.7  84.6   悪性新生物(がん)
 2006  20.8      79.0  85.8   悪性新生物(がん)

 「この半世紀で男性は21歳、女性は24歳も長生きするようになったってこと
 ですか。24年って言ったらほとんど僕の今の年齢と同じですよ!」 
 
 「でもこの数字は見るときに注意が必要ですよ。例えば1950年代と言ったら
 まだ感染症などによる乳幼児死亡率が高い時期ですから、0歳で無くなった
 方が平均寿命を押し下げていたりします。だからこの数字がそのまま生物と
 しての寿命の伸びとは言えないです。」

 「あー、なるほど。では実際のところはどうなのですか?長生きできるよう
 になっているのでしょうか?」

 「全体的に長く生きられるヒトが増えているのは事実です。ところで首位死
 因を見て何か気づきませんか?」

 「えっと、1950年代からは全結核が首位死因で、1960年代からは脳血管疾患
 、1990年代からは悪性新生物になってます。」

 「そうです。結核は抗生物質の発見やワクチンが広まったおかげで主な死因
 では無くなりました。次に出てきた脳血管疾患ですが、死因の主体は脳出血
 です。脳出血は高血圧、低栄養、塩分の取り過ぎが関係していましたが、高
 血圧を抑える降圧薬が開発され、高血圧検診が普及したことで脳出血死は急
 速に低下しました。そして現在は悪性新生物、つまりがんで無くなる方が一
 番多くなったというわけです。」

 「死因を克服しても、また別の死因で死ぬようになってしまうんですね。」

 「はい。これはアンチエイジング研究をする上でも重要な課題です。ある死
 因を取り除けば寿命は延びます。するとそれまでの寿命では問題にならなか
 った疾患が多く現れるようになり、次の死因になるのです。」

 「はぁ……いたちごっこですね。」

 「そうかもしれませんが、確実に寿命は伸びていることを忘れてはいけませ
 ん。現在は悪性新生物が首位死因ですが、これを取り除ければ寿命はさらに
 伸びていくでしょう。」

 「でもまた新しい死因が出てくるんですよね?」

 「そうでしょうね。でもそれもヒトは克服して行くと思います。」

 「じゃあ、それを繰り返して行けば、いつかは一億歳までいけますね!」

 「……それはわかりませんけど、とりあえずは悪性新生物をなんとかするこ
 とを考えましょうね?」




│備考欄 (今日の要点)
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 平均寿命は延び続けている。
 
 現在の首位死因は悪性新生物である。



●参考文献 

 平均寿命の推移表:老年医学テキスト 改訂第3版、P.4、日本老年医学会編
 、メジカルビュー社(2008)

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