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│研究日誌 エリー記す
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第60日目 活性酸素の発生量
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「エリー先生、活性酸素って一体どれくらい発生しているのでしょう?」
活性酸素とは酸素から作られる物質で、細胞やDNAを酸化して傷つけるもの
です。酸素を使って呼吸している私たちの体の中で常に作られています。活
性酸素と呼ばれる物質はたくさんありますが、代表的なものとしてスーパー
オキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルが挙げられます。
「正常ヒト細胞における酸素の消費量(細胞表面単位面積当たり)から言うと
、酸素の約95%は正常に代謝されて、残りの2〜5%が活性酸素種の生成に使わ
れるようですね。細胞内の濃度だと
活性酸素種 濃度
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
スーパーオキシド ≒ 0.1 nM
過酸化水素 ≒ 10 nM
ヒドロキシラジカル ≒ 1 pM〜1 fM
(1 pM = 0.001 nM, 1 fM = 0.001 pM)
M(モル)は濃度の単位
くらいですよ、ハル君。」
「ヒドロキシラジカルは他に比べてもずいぶん濃度が低いみたいですが……
」
「ヒドロキシラジカルは活性酸素種の中でも最も反応性が高くて傷害性が強
いですからね。その分低濃度に抑える仕組みが発達しているのか、もしくは
反応が早過ぎて生成してもすぐ消費されてしまい、結果として濃度が低いの
かもしれません。」
「なるほど。それで活性酸素はどれくらい細胞やDNAを酸化しているのでし
ょう?」
「酸素消費200分子あたり、タンパク質が2分子酸化されて、DNAやRNAなどの
核酸は1分子酸化されるようです。とは言っても酸化された物質を元に戻す
機構も発達していますから、傷害の程度も低く抑えられていますけれど。」
「でも長い年月の間には傷害が蓄積して行くって話ですよね。ここはやはり
抗酸化物質の摂取が大事なのかなぁ。」
「確かに抗酸化物質のビタミンCやビタミンEなどで酸化が抑制されていると
いう報告はありますけど、寿命が延びるかどうかははっきりしませんね。老
化との関わりもさらに研究が必要でしょう。」
│備考欄 (今日の要点)
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活性酸素には色々あり、反応性や細胞内濃度はそれぞれ異なる。
●参考
活性酸素濃度:井出利憲 編、『老化研究がわかる』、p.71、羊土社(2002)
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