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│研究日誌 第7目 エリー記す
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標題:高齢期は感染症対策が重要です。
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「エリー先生、僕の祖父が風邪をひいてしまったんですけど、もう一週間以
上も治らないんですよ。病院で診てらった方が良いと思いますか?」
「私はお医者さんではありませんし、ハル君のお祖父さんの様子も分かりま
せんから判断できないですよ。ハル君から見てどうなのですか?辛そうです
か?」
「それが、毎朝ラジオ体操に行くし、ご飯は3杯は食べるし、町を歩けば若い
娘のお尻ばっかり見てニヤついているんですよ。」
……なんて元気なおじいちゃん。
「それは……本当に風邪ひいているんですか?」
「本当みたいですよ。熱は38℃近くありますし、鼻水は止まらないですし、
声もガラガラですし。」
「それは確かに風邪をひいてそうですね。」
「そうなんですよ。祖父は『このくらいの風邪はいつもどおりにしてても30
年前なら1日で治ったんだがな〜』とか言ってますよ。」
「元気そうでも、やはりお年を召していらっしゃるんですね。高齢だと免疫
力が低下するというのは一般的なことですから。」
「そう言えば、高齢者は簡単に風邪をこじらせて肺炎になって死んでしまう
って話ですよね。」
「その通りです。高齢だと若い時にはなんでも無かった感染症で命を落とし
てしまうことがままあります。例えばインフルエンザやノロウイルス、腸管
出血性大腸菌(O-157大腸菌など)で、ばたばたと高齢の方が亡くなっていま
すね。」
「うーん……じいちゃん大丈夫かな〜?」
「こじらせる前に病院で治療してしまった方が安全でしょうね。」
「エリー先生の話を聞いたらそんな気がしてきました。祖父は病院嫌いなん
ですけど、なんとか説得してみますよ。」
「それが良いと思います。」
――じぃ〜っ。
なんでしょう?ハル君が私の顔をじっと見てます。
「エリー先生!」
「は、はいっ!」
「僕と一緒に祖父のところまで来て頂けないでしょうか?」
「えっ?!どうしたんですか?一体……」
「実は祖父は若い美しい女性が大好きなんです。」
まぁ、さっきの話からそれは分かっていましたけど……。
「そのようですね。それと今の話はどうつながるのですか?」
「はい。先ほど祖父を説得すると言いましたけど、僕では十中八九無理です
!」
無理ですって……そんな断言されても困ります。
「ですが、エリー先生のような美しい女性から囁かれたら、二つ返事で承知
してくれるはずです!神に誓って間違いありません!」
ふふっ。ハル君も嬉しいことを言ってくれますね。その通りですけど。
「いいでしょう。ハル君のお爺様ですからね。お付き合いしますよ。でも囁
いたりはしませんよ?普通に説得します。」
「十分です!ありがとうございます!祖父のことですから、エリー先生見た
ら興奮して頭の血管切れちゃうかもしれませんね。あははっ。」
笑い事ではないと思いますが……行くはやっぱり止めてしまいましょうか。
│備考欄 (今日の要点)
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高齢では免疫力が低下し、感染症が重症化しやすい。
高齢期では病気の予防に努め、きちんと治療することが重要である。
●参考文献
高齢者に多い感染症:老年医学テキスト 改訂第3版、P.536、日本老年医学
会編、メジカルビュー社(2008)
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