エリーアンチエイジング研究室

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│研究日誌 エリー記す
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 第70日目 人工肝臓の今
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 「ハル君、人工肝臓なるものが作られていることを知っていますか?」

 「え!?そんなものが!?でもエリー先生、肝臓って血液中の毒素を弱毒化
 や分解をしたり、3000種類以上のタンパク質を作っていたりとすごい複雑な
 働きをしているんですよ?そんなものが人工的にできるんですか?」

 「私が知っているものは肝臓のがん化細胞と機械を融合したものですから、
 100%人工物というわけではありませんよ。」

 「あ、なるほど。もう少し詳しく教えてください。」

 「はい。
 
 まず、この装置の名前はELAD(Eextracorporeal Liver Assist Device、体
 外肝臓補助装置)と言います。

 次に装置の構造ですが、ELADの中心部には4つのカートリッジがあり、その
 中に健康な肝臓細胞の働きを再現しているがん細胞が入っています。

 使い方は患者の血液をELADのカートリッジに送り込むというものです。

 カートリッジに送られた血液中の毒素は多孔質膜を通過してがん細胞に入り
 、そこで毒性の低い化学物質に変化されます。またカートリッジ中のがん細
 胞は血液凝固因子などのタンパク質も合成し、多孔質膜を経由して送り返し
 ています。多孔質膜はタンパク質や毒素は通過しますが、大きながん細胞は
 通過できないようになっています。

 これが1日24時間休まずに行われるのです。」

 「すごいですね!これがあれば肝臓がダメになっても肝移植なしで生きられ
 るじゃないですか!」

 「実はそうでもないのですよ。今まで似たような装置はアメリカの複数の企
 業で作られ、臨床試験も行なわれてきましたが、未だに FDA(アメリカ食品
 医薬品局、日本の厚生労働省に当たる)の認可が降りているものはありませ
 ん。この装置で助かったヒトもいますが、治療成績がまだ不十分なんです。
 盛んに研究はされていますけれど。」

 「助かったヒトはずっとその装置をつけているんですか?」

 「いいえ。一時的に使っただけです。今の所この装置は急性肝炎などで突然
 肝臓が破壊されてしまった場合に、肝臓移植までの時間を稼ぐ目的で使用さ
 れます。」

 「あ、やっぱり肝臓移植は必要なんですね。でも将来的には似たような装置
 で永久稼動する埋め込み型のものなんかができるかもしれないですよね。」

 「うーん……どうでしょうね。でも再生医療が成熟するまでは ELAD のよう
 な装置が求められることでしょう。」



│備考欄 (今日の要点)
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 人工肝臓装置の開発が進められている。



●参考
 夢の“人工肝臓”、臨床試験が最終段階へ
 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090206/130418/
 nikkei BPnet 2009年2月6日

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